遺留分制度の変更 (令和元年)
2024/03/25
少し前のことになりますが、令和元年に遺留分制度について法改正がなされました。今までは遺留分減殺(いりゅうぶんげんさい)請求と呼ばれていたものが、遺留分侵害額(いりゅうぶんしんがいがく)請求へと名称を変え、中身も変わりました。
今回はその変更点などをお伝えします。
目次
遺留分とは
遺留分とは、一定の相続人おいて、遺言によっても奪われない一定割合の留保分のことを指します。
これが法律によって認められていることから、もし被相続人が誰か一人の相続人だけに全財産を渡す内容の遺言を書いていたとしても、それによって他の相続人が受け取る財産がゼロになるということはなく、一定部分は受け取ることができます。
例えば、被相続人Aが亡くなり、相続人は妻B、子C、Dの合計3名だったケースにおいて、Aが全財産を妻Bに渡す遺言を書いていたとします。この場合、CとDは「遺言があるから仕方ないのか…」と、相続がゼロになると思われるかもしれません。しかし、そのようなことはなく、それぞれがAの遺産の8分の1を請求することができます。このように遺言によっても奪われない部分が「遺留分」です。
ただ、以下のとおり、遺言がない場合の法定相続分と比べると割合は下がります。つまり、遺言を書いた被相続人の意向も尊重しつつ、一方で相続人の期待も一部は保護しようという制度です (なお、相続人のうち被相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められていません。)。
- 遺言なし B…1/2、CとD…それぞれ1/4
- Bに全財産を渡す遺言あり B…3/4、CとD…それぞれ1/8 (遺留分)
※CとDが「Aの遺言どおりでいい」と判断すれば、Bが100%取得することも可能
今回の法改正においても、この大枠は変わっていません。
変更点
それでは、今回の法改正によって大きく変わった点をご説明します。
- 名称変更
今までは、遺言によって侵害された遺留分を請求する権利を、遺留分減殺請求と言っていましたが、法改正により、遺留分侵害額請求、と呼ばれるようになりました。 - 権利内容の変更
請求できる割合自体には変更はありません。前述の例でいえば、法改正前後を問わず、CとDが請求できる遺留分は1/8です (基本的には法定相続分の1/2です。)。
しかし、遺留分として請求できる内容について、法改正後は「金銭」請求権に変更されました。
たとえば、上記の事例において、被相続人Aが残した遺産が不動産だけだった場合に、その不動産を「妻Bに渡す」という遺言があった場合、法改正前は、CやDが遺留分として請求できるのは不動産についての1/8を取得する権利でした (結果的に遺留分減殺請求権を行使した場合、不動産が共有状態となります。)。
しかし、法改正後は、不動産の価値を金銭換算し、その1/8に相当する金額を支払うように請求できるようになりました。
注意点
上記の変更は、遺留分を権利行使する人にとっては好都合ですが、行使される人にとっては不都合な面もあります。それというのも不動産の評価が数千万円になる場合、遺留分を行使された側は数百万円レベルの現金支出が必要となります。もし遺産が不動産だけであれば、相続しても現金は増えていないのに、遺留分侵害額請求により多額の現金支出が必要となるのです。
これに関連して、金銭の準備のために支払猶予を求める法律も整備されましたが、いずれにせよ、遺留分のことを意識していない遺言は、相続人にとって紛争の火種となることもありますので、遺言書を作成する際には、必ず遺留分のことを意識する必要があります。
また、遺留分侵害額請求を行う側には期限が設けられています。被相続人の遺言や生前贈与により、ご自身の遺留分が侵害された知ったときは、必ず1年以内に動き出すようにご留意ください。
まとめ
今回は、遺留分制度の法改正についてご紹介しました。
亡くなったご親族がいらっしゃる場合において、「遺言書が出てきて何も相続できなくなった」という場合は、遺留分を根拠とする請求が可能です。どのような請求ができるかご不安な場合は一度ご相談ください。
また、遺言書を作成される際には、この遺留分制度は必ず気を配るべき制度です。どういった配慮をして遺言書を作成すればいいのか迷われる場合はいつでもご相談ください。
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