名義預金について気をつけるべきこと
2024/02/23
相続の際に問題となるものの一つとして「名義預金」というものがあります。何となく聞いたことがあるという方から、これで痛い目をみたという方まで様々かと思いますが、今回はこの名義預金についてお伝えいたします。
目次
名義預金とは?
被相続人の遺産の主要なものに預貯金があります。その預貯金は、被相続人名義であることが通常ですが、実質的に被相続人が預貯金を所有していても、その預貯金の名義が相続人名義や第三者の名義になっているということもあり得ます。このように被相続人以外の名義になっているものの被相続人が実質的に所有者といえる預貯金が「名義預金」と呼ばれます。
実質的に被相続人の所有と判断される「名義預金」は、口座名義が別の方になっていても、被相続人の遺産として、遺産分割の対象となり、相続税申告の対象にもなります。そして、このことが予期せぬトラブルの引き金となることがあります。
名義預金と遺産分割
名義預金として扱われることが多い預金は、親が子の名義で作った定期預金などです。たとえ口座の名義人が子供名義になっていたとしても、実際には親が管理していて、子供が使うことはできていないと判断されれば、名義預金として遺産分割の対象となることがあります。
トラブルになる一例として、親Aに子供二人(B・C)が相続人としていた場合を想定します。この場合にAが、B・C両名に300万円の定期預金口座を作っていましたが、姉Bは早くに結婚し、家庭を持ったこともあり親からその口座の印鑑や通帳を受け取り早々に使いきりました。
一方で、年の離れた弟Cは、大学院まで進み就職も遅かったため、その口座の存在を聞かされることもなくようやく数年前に就職しました。そんなあるときAが亡くなってしまいました(Aの配偶者はいない事例を想定します。)。
この場合にC名義の口座の300万円については「名義預金」として、遺産分割の対象となる可能性が出てくるのです。つまり、B・Cはこの300万円を半分半分(それぞれ150万円)で分割しなければならない、という可能性です(わかりやすくするため上記以外の財産の存在はなかったとします。)。
「え、Bだって300万円受け取って使ってしまったのに?」というという疑問は当然に出てくるでしょう。しかし、Bが「もらってない」と言い、通帳履歴が古すぎて取れなかった場合はどうでしょう。Bがお金をもらったという証拠は出てこない可能性があるのです。特に20年~30年前のことになってくると記憶も朧気でBに悪気がなくそういった主張をすることもあります。
名義預金と相続税
上記はやや極端のケースを想定しましたが、より問題となりやすいのは相続税の税務調査のシチュエーションです。税務調査でも同様に、上記Bのようなケースを「名義預金」と認定することがあります。この場合、口座名義はBでも実質Aの財産と扱われ、相続税が発生するのです。つまり、すでにBの財産であれば全く税金がかからないのに、Aの財産と扱われることで税金を払わなければいけなくなるのです。
相続税の計算は複雑ですが、仮に10%の税率だとしたら、300万円分の預金に対しては30万円を払うことになるのです。つまり「名義預金」と認定されるか否かで、30万円を負担するか否かが異なってくるのです。
できる対策
では、こういったことにならないようにするにはどうしたらいいでしょうか。
基本的な対策としては、親が子に口座を作ってあげる場合には、しかるべきときに親から子にその口座の存在を説明しておくことは一つの対策となります。子供が知らない口座があることが名義預金の引き金になります。もちろん、まだ小中学校のお子さんに大金を持たせることは、それはそれで別の問題につながる場合もあるので、時機をみる必要はあります。しかし、子供が成人して就職してもなんとなくその口座をそのままにしておくのはよくありません。また、存在を伝えるのとは別に、子供が自由に使える状況にしておくことも必要です。存在だけは伝えていたとしても、親が届出印や通帳を管理していて子供が自由に使えない状況ですと、結局名義預金の認定をされることになります。
まとめ
以上のように、名義預金というのは、わりとどなたでも遭遇する可能性のある問題です。せっかく子供の将来のために良かれと思って口座を作っていたのに、これがトラブルの引き金となることが実際に起こっています。親の立場でも子供の立場でも「名義預金かも」と思われる口座がある場合や、対応に困った場合はいつでもご相談ください。
文責:法律事務所光琳 弁護士 若山 智重(愛知県弁護士会所属)
取扱分野:相続問題(遺産分割調停、遺産分割協議書・遺言書作成、遺留分侵害額請求
交通事故(過失割合、後遺障害等級)、離婚(不貞、慰謝料請求)
対応地域:愛知県(名古屋市)、岐阜県、三重県
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