『関心領域』
2024/06/17
『関心領域』
傍観をゆるしてくれない映画
疲れる時間でした。
否応なしに観客自身の態度を問われてしまう映画『関心領域』を観ました。
主たるテーマとしては、ロズニツァの『アウステルリッツ』とも通じるところがあり、時代を隔てた我々が、アウシュビッツのような出来事にどう向き合うべきか、ひいては現代の紛争に対してもどう対峙すべきかが問われます。
この映画のレビューはいくつか目にしましたが、そこまで言及されていなかった作品が『サウルの息子』です。私としては『サウルの息子』をA面とすれば、この『関心領域』はそのB面にあたるような映画に思われました。人類史上最悪といわれる惨事の現場を映したのが『サウルの息子』、壁一つ隔てたドイツ人自宅から映したのが『関心領域』、というように表裏一体の映画に感じます。
この両作がそういった対を成すものに感じさせる最たる理由は、いずれの作品も途方もない調査の上、どこまでも真摯に作品を作り上げたことにより、映画のクオリティが限界突破している点です。ここまで真摯に映画を作っていたら人生に何本も映画を撮れないだろうな、と思わされます。
次に、この映画が突きつけてくるものについての私見です。この投げかけを真正面から受け止めるならば、現代の数多くの紛争についても何らかの責任がないか顧みるべきといわれているような気になります。そういう意味では少なからず気分の悪い映画ともいえます。自省を迫られるのです。
しかし、多くの観客にとっては突然そのように問いかけられたとして、果たして自分の問題であり自分の責任であると真摯に受け止められるでしょうか。私には正直そのような責任を引き受ける覚悟はないと言わざるを得ません。『シンドラーのリスト』のクライマックスで、オスカー・シンドラーが救えなかった人々のことを嘆くシーンを見て「そこまで自分の問題としてとらえるのは逆にどうなんだ」と感じた記憶が甦ります。
自分のできる範囲でできることをやるだけでも精一杯の世の中において、縁遠い世界にまで責任を感じるべきとの指摘がもしあるとすれば、そこには非現実的なものを感じてしまいます。無論、自分の身近に起こった同種の問題に対しては、より意識的に関わっていければとは思いましたが。
以上のような思いもあり、監督が観客に対してどこまでを求めているのかというのが気になる映画でしたが、「そんなことは自分で考えて自分で答えを出せ」と言われるのがオチでしょうし、何事もそうあるべきなのでしょう。
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