『正義の行方』
2024/06/07
私たちの羅生門
飯塚事件に迫る新境地
一昨日6月5日、福岡地裁が再審を認めなかったいわゆる「飯塚事件」を扱ったドキュメンタリー映画を観ました。
この手の映画では、作り手が冤罪ベースで筋を組み立てることになりがちにも思いますが、本作の前半はむしろ警察側の言い分を主軸に取材が進んでいき、その意外性にのみこまれました。
その後、中盤ではこれまでメディアで幾度も目にしてきた弁護人側の言い分もしっかり展開され、作り手の中立な立ち場を示しつつ、終盤には西日本新聞という地元メディアが、事件取材の自己検証を兼ねていま一度事件の真相を問う立ち位置で登場するというこれまた想像の上を行く展開が待っていました。
この映画を観て一番驚いたことは、インタビューを受けている人たちが信じられないほど率直に胸をひらいて心境を吐露していることでした。とりわけ警察がここまで率直に意見を語る様はお目にかかった記憶がありません。また、西日本新聞の傍示氏や宮崎氏も親友と二人きりの席で語っているのかと見紛うほどに、そして、そこまで話して大丈夫なんですかと心配になるほどに率直な内心を述べていました。これらだけでも一見の価値がありました。
作り手の視座を排して観察することに徹する想田監督の作品 (参照)のようにそもそも際立った特徴を有するドキュメンタリーもありますが、本作品は、通常のドキュメンタリーのタッチでありながらも、作り手が被写体と深い信頼関係を築くことでしか達成できない新たな境地を見せてくれたように思います (もちろんスポーツ選手や芸能人・俳優などであればこういった信頼関係に基づくドキュメンタリー作品を観たことはありますが、警察やマスコミがこれだけ率直に自らを思い語るのは非常に稀なことのように感じました。)。
監督インタビューでは、取材対象者から等距離でいることを心掛けたそうで、自身を「風見鶏」と評したり、「僕自身がジキルとハイド」とも語っていました。これはこれである種の作為といえなくもないかもしれませんが、この監督の取り組みによってしか達成できない何かが映画に反映されており、まさしく『羅生門』スタイルと呼ぶにふさわしい作品です。
他にも國松孝次元警察庁長官が意外な役回りとして出てきますが、氏に対する当時の西日本新聞の取材も驚く内容でした。
一歩引いた眼で本事件の状況を把握するにはこの上ない作品です。
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