『落下の解剖学』ジュスティーヌ・トリエ

昨年のパルム・ドール受賞作、かつ、本年のアカデミー賞脚本賞受賞作『落下の解剖学』を観ました。

パルム・ドールといえばヨーロッパの映画祭の中でもひと際注目されるカンヌ映画祭の最高賞ですので、なにはなくともとりあえず観るようにしてます。受賞作にはかなり風変わりな作品も多いのですが（直近の『TITANE/チタン』や『逆転のトライアングル』もかなり特殊な映画でした。）、「こういう映画が評価されているのだな」と、斯界の趨勢をキャッチアップするための重要な通過儀礼としています。

さて、最新の受賞作『落下の解剖学』ですが、かなり硬派で実直な作品でした。
事前知識なく鑑賞しましたが、法廷劇部分にとても力が込められた作品で、法律家の端くれとして強く印象に残る内容でした。作品を通して、無数の憶測が散乱するネット社会に対する警鐘の意味合いが強かったように感じました。また、『ある結婚の風景』、『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』、『マリッジ・ストーリー』の系譜に堂々と並ぶようなシーンも見ごたえがありました。同じパルム・ドール受賞作『雪の轍』を想起した方も多かったのではないでしょうか。主演のザンドラ・ヒュラーは途方もない演技力です。

本作は、アカデミー賞でも、外国語作品ながら脚本賞を受賞するなど、かなりの健闘を見せました（作品賞、監督賞にもノミネートされました。）。『ドライブ・マイ・カー』の例を挙げるまでもなく、近年のアカデミー賞の国際化は著しいですね。